こんにちはアイコです。
介護の仕事において看取り体験は本当に辛いですよね。
日常生活において滅多に経験することのない出来事なので、なかなか受け入れることが出来ないんですよね。
私自身、7年間介護職として働く中で何度も辛い看取りを経験をしてきました。
そこで本記事では
- 看取りの辛さの原因とそれを乗り越えるための対処法
- 私が最も辛かった看取りの体験談
をお伝えします。
介護職における看取りが辛い原因
介護の仕事において看取りが辛いと感じる主な原因は以下の3つです。
- 元気な頃の入居者と比べてしまう
- 生前に満足なケアが出来なかったことによる後悔
- 看取りに関わったことによる責任
それぞれ解説してきます。
原因①元気な頃の入居者と比べてしまう
看取りの辛さの最も大きな原因は元気な頃の入居者と比べてしまうことです。
なぜならば、もうこれからは一緒の時間を過ごせないという喪失感に襲われるからです。
特に関わりが深かった入居者ほどたくさんの思い出がありますし感情移入が大きくなります。
毎日を一緒に過ごしていると、その入居者と過ごした施設での楽しい思い出などが蘇ってくるのです。
また高齢者の場合、病気や事故が原因で短期間でも一気に身体の機能が衰えてしまう場合があります。
そうなると介護士も心の準備をしないうちに入居者がどんどん弱っていく姿を見なければなりません。
今まで出来ていたことが出来なくなるということは本人だけでなく、側で見ている介護士も同じように辛いのです。
特にこうした人間の状態の変化は普段の日常生活ではあまり経験することがありません。
非日常だからこそ受け入れ難く、辛さを感じてしまいやすいのです。
原因②生前に満足なケアが出来なかったことによる後悔
看取りの辛さの2つ目の原因は生前に満足なケアが出来なかったことによる後悔です。
これは特に真面目で優しい介護士ほど陥りやすいです。
なぜならば真面目で優しい性格の人ほど
「本当にこの入居者は満足のいく最期を迎えられたかな」
「他にももっと出来ることがあったんじゃないかな」
などと考えてしまうからです。
例えばその入居者が元気な時に「〇〇のお店のケーキが美味しいから是非また食べてみたいわ」と話していたけれど結局その機会を逃したままだったとか、忙しい時につい強く当たってしまったけどもっと優しく出来たのではないかなど、思い出と共に後悔が自然と滲み出てくるのです。
原因③看取りに関わったことによる責任
辛さの原因の3つ目は看取りに関わったことによる責任です。
これは特に初めて看取りを経験した方や、介護の経験年数が浅い方ほど感じやすいです。
看取りの直前の方は食事や水分もほとんど摂れなくなります。
また徐々に痩せ細っていくことで褥瘡(床ずれ)なども出来やすくなります。
これは仕方のないことなのですが、それでも
「もっと時間をかければ少しでも多くの栄養や水分が取れたかもしれない」
「もっと余裕があれば丁寧なケアが出来たかもしれない」
「もっと本人の為になる何かが出来たんじゃないかな」
などつい考えてしまいがちです。
また亡くなった直後も、身体を拭いてあげたり浴衣に着替えさせてあげたりするのですが、慣れないとスムーズに動けず「周りの職員や他の入居者にも負担をかけてしまっているのでは…」と考えてしまう場合もあります。
このように入居者に対しての責任感と仕事としての責任感が同時に降りかかってくることもあります。
看取りの辛さを乗り越えるための対処法
看取りの辛さを乗り越えるには以下の対処法がおすすめです。
- 看取りの経験者に話を聞いてもらう
- 自分の感情を書き出す
- 少しでも看取り後の後悔を減らすため日頃のケアに注力する
看取りはどうしても辛いものですが、ここでは少しでも心が軽くなる対処法をご紹介していきます。
対処法①看取りの経験者に話を聞いてもらう
1つ目の対処法は看取りの経験者に話を聞いてもらうことです。
同僚など話せる人に聞いてもらうだけでも違いますが、それよりも同じ看取りを経験したことがある先輩や上司に話を聞いてもらうことがおすすめです。
経験者であれば看取りの辛さもわかりますし、実際にそれらを乗り越えてこれまで仕事をしてきているからです。
同じ辛さを経験した人に共感してもらい感情を吐き出すだけでも気持ちは楽になりますし、自分では気付けなかったことに気付かせてくれる可能性もあります。
このようにまずは一番気持ちをわかってくれる身近な人に話を聞いてもらうことがおすすめです。
対処法②自分の感情を書き出す
2つ目におすすめの対処法は自分の感情を紙に書き出すことです。
なぜならば実際に書き出すことで自分の感情や考えを客観視することが出来るからです。
辛い出来事や悩みがあった時、頭の中でぐるぐると同じ考えが巡ってしまいいつまでも解決策が見つからない…という経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
頭の中だけで考えていると次々と沢山の情報が浮かび上がってきてしまい、感情にも整理が付かなくなるのです。
そこで一度頭の中の情報を紙に書き出してみることで
- 自分は今何を感じているのか
- なぜその感情を感じているのか
- その感情による弊害は何か
- この辛い状況を乗り越え、次に繋げるために出来そうなことはあるか
などといったことが整理出来るようになります。
この方法は看取りの時以外でも、普段辛いことや悩みがあった時にも応用できます。
対処法③少しでも看取り後の後悔を減らすため日頃のケアに注力する
3つ目の対処法は日頃のケアに注力することです。
この対処法については今の辛さを軽減するというよりもどちらかというと、今後同じように看取りを経験した際に少しでも負担を軽くするための対処法です。
先述したように、看取りの辛さの原因は
- 元気な頃の入居者と比べてしまう
- 生前に満足なケアが出来なかったことによる後悔
- 看取りに関わったことによる責任
にあるとお伝えしました。
1つ目の「元気な頃の入居者と比べてしまう」というのは仕方のないことですが、
「満足なケアが出来なかったことによる後悔」「看取りに関わったことによる責任」については改善することが出来ます。
満足なケアについては施設の決まりやご本人の病状などもあるので何をどこまで出来るかというのもありますが、自分で変えられる部分も多いです。
私が看取り後の後悔を減らすためにしたこと
私の場合、看取り後に「忙しくてイライラした時に強い口調で当たってしまうことが多かったな」という後悔がありました。
この時「もっと自分に経験があって仕事をスムーズにこなせたら余裕が持てたのに」と反省する想いがありました。
また家から職場が遠かったことや不規則な生活リズムに慣れるのに時間がかかり、体調管理が上手く出来ずイライラしやすかったことも挙げられます。
初めは大変かもしれませんが、こうした部分は自分で改善していくことが出来ます。
私の場合は隙間時間や終業後に先輩に頼み、おむつ交換や移乗介助などのコツを教えてもらって出来るだけ早く技術が身に付けられるようにしました。
業務がスムーズにこなせると時間にも気持ちにも余裕が持てるようになりました。
また入居者の希望をすべて叶えることは難しいかもしれませんが、ご本人が出来るだけ快適に過ごせるにはどうすれば良いかを日々考えることも大事です。
例えば旅行は難しくとも出来るだけ外に出られる機会を増やしたり、ご家族に頼んで部屋の中にご本人の好きな物を多く揃えたりするなど、ご本人の希望に出来るだけ近付ける工夫をしていきます。
慣れないうちは大変かもしれませんが、入居者に喜んでもらえる機会を増やすことで職員、入居者ともに後悔の少ない状態で看取りの時を迎えられるようになります。
私の最も辛かった初めての看取り体験談
私の7年間の介護歴で最も辛かった看取りケアは、やはり初めて看取りを体験した時です。
当時の私は特養に勤めていたのですが、働き始めてまだ半年ほどで人が息を引き取る瞬間というものをその時初めて目の当たりにしたからです。
医療介護現場にいない限り、その瞬間を目の当たりにするということは日常ではほぼありません。
介護職として働くという時点でわかってはいたことですが、やはり実際に体験してみるとそれだけで辛いものがありました。
私が最初に看取りを経験したのは先輩と2人で夜勤に入っていた時でした。
私が出会った頃の入居者の様子
その方は認知症の方で、入職当初からすでにほぼ寝たきりで時々ボソボソと言葉を発する程度なものの、食事や水分の飲み込みは問題なく行えていた方でした。
またその方はおむつ交換が嫌いで、おむつを変えようとすると手が伸びてきて職員の手を引っ掻いたり、叩いたりしてきました。
認知症の方なので仕方ないのですが、おむつを交換する度にそうして邪魔をされてしまうので正直イライラすることもありました。
その反面、甘いものが好きでゼリーなどを食べると「美味しい美味しい」と可愛らしい笑顔を見せてくれることもありました。
入居者が熱を出したことがきっかけで急変
私が入職してから半年間、その方は特に大きな変化もなく変わりなく過ごされていました。
ですがある日、一度熱を出したことから徐々に身体が弱っていき、水分なども上手く摂れなくなってしまったのです。
具合が悪くなってからは笑顔や言葉も少なくなり、同時におむつ交換をしても嫌がることも少なくなっていきました。
ケアをするのが大変なこともあったけど、元気がなくなっていくのはやはり寂しく感じたものです。
そしてついに看取った瞬間、ある程度覚悟は出来ていたのですが、なんとも言えない喪失感に襲われました。
それと同時に、今仕事として最後のケアをしなければいけない、という焦りもありました。
身体を拭いたり浴衣に着替えさせたりなどのケアがあり、夜中だったので先輩から看護師やご家族などに連絡してもらっている間にそれらを行おうとするのですが、私は不安と緊張からスムーズにケアを行うことが出来ませんでした。
結局後から合流した先輩にその大半をやってもらうことになってしまい、とても迷惑をかけたなと反省しました。
【悲しいだけじゃない】仕事としての責任感
看取りは普段ない出来事なので、その方の対応をしている間に他の業務も遅れてしまいます。
悲しみはもちろんですが、そうした仕事としての焦りや不安感も大きかったのを覚えています。
特に私が勤めていたのは特養で看取ったのが夜勤帯だったので、業務量が多いのに頼れる職員が少なかったことからなおさら不安に感じました。
とは言えやはり今までいた入居者の方がいなくなってしまったことへの喪失感、違和感はしばらく続いていました。
看取りの辛い気持ちを乗り越えるには時間がかかる
正直なところ、看取りにおける辛い気持ちを乗り越えるには時間がかかります。
特にその入居者への思い入れが強ければ強いほど、なおさら辛く感じるでしょう。
ですが私は、それで良いと思います。
実はとても残念なお話をすると、介護の仕事においては年数を重ねるほど看取りに対して辛いという感情が薄れていってしまう人がほとんどです。
慣れるから大丈夫ですよ、ということを言いたいのではありません。
私は入職して1年目の頃、同期の友人と「何年経っても人がいなくなる悲しみを忘れたくないね」という話をしていました。
それでも介護職としての経験年数を重ねるうちに「看取りが辛い」という感情は薄れていきました。
むしろそんな自分に対して悲しくなってしまうのです。
「看取りが辛い」というのは人間であれば当たり前の感情だと思います。
そしてとてもそれは大事な感情です。
初めのうちはなかなか割り切ることが出来ずに辛い想いをするかもしれません。
それはもう『介護職の宿命』と言っても良いでしょう。
ですから無理にその感情から逃げようとする必要はなく、発散出来そうなときに自分なりの方法で適度に発散するのがおすすめです。
そして「この入居者は満足な最期を迎えられたかな」と考えた時、自分で納得がいくケアが出来たと思えればとても素晴らしいですし、後悔があるなら今後それを繰り返さないよう改善していくことで、満足な看取りケアを行えるようになるのではないでしょうか。